映画「あん」を最近見た。涙腺が崩壊した。
以下Wikipediaより引用だ。
『あん』は、2013年2月にドリアン助川が出版した小説。第25回読書感想画中央コンクールで指定図書(中学校・高等学校の部)に選定される
日本・フランス・ドイツ合作の映画。2015年5月30日公開。監督・脚本は河瀬直美。
主演の樹木希林が2018年9月15日に逝去した際、樹木の最後の主演映画であることから多くの興行関係者から本作の追悼上映の希望の声が上がり、同月21日より再上映が行われた。追悼上映は、2015年の公開時を上回る90スクリーン以上で行われた
樹木希林さんの孫であり本木雅弘さんの長男である内田伽羅さんも出演している。
予告編はこちら。
Amazon Prime Videoの予告編をみて、それだけで涙の予感しかしなかった本作。
予想通りに涙を流してしまう。樹木希林の演技にやられるし、永瀬さんの口少ないけども背負っている苦しみみたいなものが伝わる演技も見どころだし、二人の触れ合いに魅せられるし。
本当にこういうおばあちゃんはいるし、演技とは思えないような自然体に見えるが、しっかりと映画のテーマである「ハンセン病」患者さんが持つ過去を内包した”いま”の生き方の一つを見せてくれる。
いまコロナウイルスが流行っている中で、世界各地では偏見が発生しているニュース記事は日々目にする。不安や無理解から生じる偏見・差別は人の弱さを表しているのだろうし、人種が違かろうが同じであろうが、それは変わらない。
その弱さを隠すように他者を攻撃する。それが集団となり社会的な差別構造が出来上がってしまう。多数派と少数派というような構図ができあがり、多数派に属する人間がその弱さを隠し自己正当化のために、少数派を社会的に追いやるようなことをする。
こうした構図が、きっと色んな所で見れるのだろう。
自分を守ろうとするあまり、他人を傷つけそれに鈍感になっていく。
立ち止まり相手のことを思いやる余裕が失われたとき、人はいとも簡単に人を傷つけることができるのだ。
この映画は、そうやって社会の隅っこに追いやられた人々のことにスポットライトを当てて、静かにその事実を語りかけてくれる啓蒙的な映画だ。
無知は罪なのだ。恥ずかしながら、ぼくはハンセン病のことなんて昔、社会の授業で習ったような覚えがあるものの、この映画を見るまで意識したことはなかった。そして患者さんたちが歴史的に置かれてきた立場や、どのような暮らしを強いられてきたか、その一端を垣間みることができた。
この映画の素晴らしいところの一つは、それを恨みや悲しみで語らせるのではなく、美味しいどらやきを作るという、素朴な営みを通して、自然に耳を傾けてその美しさや感謝の念をそのまま受け入れ想いを馳せる、そのことを見事に映像化している点だ。
この映画をみて、如何に自分の生活の中に、そういった瞬間がないか、地に足が着いていない、そうした感性が鈍化してしまっているか、そうした諸々の思念に囚われる。
単純に、そうした心の有り様が羨ましいとすら思ってしまう。
これは、心の美しさの物語だ。差別や偏見に負けず、憎悪に心を失うことなく、自身の五感を使って精一杯生きてきた有り様。それを観客へ、静かに、しかしじんわりと感情に問いかけていく。
久しぶりに良い映画を見させていただきました。また観たい。
原作者へのインタビュー記事があるので併せて紹介。